最終更新日: 2024年07月25日
筋トレといえば、以前はアスリートや部活をする学生のためのものというイメージでしたが、最近ではフィットネスクラブが急増したのもあり、多くの人にとって一般的なものになっています。コロナ禍に自宅で過ごす時間が増え、運動不足を解消するために筋トレを始めた、という方も少なくないのではないでしょうか?
筋トレをしていて体が引き締まった、体重が減って体つきも変わってきた、といった変化があればいいのですが、必ずしもすぐに成果が出るわけではありません。なかなか筋トレの成果が出ないという方は、もしかしたらテストステロンの影響かも。
この記事では、テストステロンと筋トレの関係について解説します。
目次
テストステロンが筋肉を育てる?
「男性ホルモン」と呼ばれるテストステロンは、筋肉を育て男性らしい体つきを作る働きがあります。テストステロンがどのようにして筋肉を育てるのか、見ていきましょう。
筋トレで筋肉が育つのはなぜ?
筋肉は細長い筋線維が束になってできています。筋線維は一つ一つが細胞であり、筋トレをしても線維の数はそれほど変化しません。筋トレで筋肉が育つのは、筋線維が太くなることによります。
トレーニングをすると筋肉が傷つきます。筋肉が傷つくと普段は休止しているサテライト細胞という細胞が活性化し、筋線維を再生し修復します。筋肉は修復される時にそれ以前よりも太くなり、筋肉が増えて強くなるのです。
テストステロンなどのホルモンと筋トレの関係
筋トレによって体が刺激を受け、それに応じて体が筋肉を作ることで筋肉は育ちます。体が筋肉を作るときに作用すると考えられるのが、ホルモンです。体内には数多くのホルモンがありますが、次の3種類のホルモンは筋肉と関係があると考えられています。
・テストステロン
筋線維は絶えず分解と合成を繰り返しており、合成が上回れば筋肉は強くなります。テストステロンは筋線維で蛋白質合成の増加、サテライトセル活性化などの作用を発揮し、筋線維を太くする働きがあります。
・成長ホルモン
成長ホルモンは身長の伸びや組織の修復に関係するホルモンで、脳の下垂体というところから分泌されます。成長ホルモンは筋トレや運動後に分泌量が増加することや、成長ホルモンの投与により筋肥大が見られた事実などから、筋肉との関係があると考えられています。
・インスリン
糖尿病の治療薬として認識されているインスリンは、膵臓から分泌されるホルモンです。血液中の糖を取り込んで体内に蓄積するため、血糖値を下げることができます。糖だけでなくアミノ酸を取り込み、蛋白質合成を促進することで筋肉を育てる働きがあると考えられています。
多くの研究でこれらのホルモンが筋肉量を増加させることが示されており、筋肉と関係があることは確かであるといえそうです。しかしそれぞれのホルモンが単独で筋肥大に必須なわけではないと結論づける研究もあります。筋トレの成果は一つの要因で決まるものではなく、複合的な要因で決まるという認識が必要であると同時に、ホルモンさえ増やせば筋肉がどんどん増える、というわけではないことを知っておきましょう。
テストステロンが減少すると筋肉が減少する
鍛えれば強くなる筋肉も、何もしなければ弱くなります。特に加齢の影響が深刻になることもあります。筋肉の減少とテストステロンの関係を見ていきましょう。
男性は女性よりも筋肉が減りやすい
加齢による筋肉の減少を調べた研究によれば、女性では20歳代と比較して60歳以降になると筋肉が有意に減少するのに対して、男性では40歳以降に減少するとされており、女性よりも早く筋肉が減少することが分かります。
男性と女性で様相が異なるのは、ホルモンが影響している可能性があります。女性は閉経に伴い50歳代以降にエストロゲンが減少します。男性ではテストステロンが20歳代でピークを迎え、その後年々減少します。男性の筋肉が早く減りやすいのはテストステロンの減少が関係している可能性があり、テストステロンが減少すれば筋トレの成果も出づらいと考えられます。
テストステロン補充療法とドーピング
筋量が減少する病気「サルコペニア」ではテストステロンの補充療法が試みられることがあります。テストステロンの補充にはパッチや飲み薬の方法があり、それにより筋量が改善したという研究があります。
またテストステロンは筋肥大に作用するため、筋肉増強剤として1982年からIOCのドーピング薬物リストに収載されています。
このように病気の治療方法や、ドーピングの歴史からもテストステロンと筋肉の深い関係を知ることができます。
まとめ
テストステロンと筋トレの関係について紹介しました。筋トレの成果が出ない状況が続くと、強度をどんどん上げてケガをしてしまったり、逆にやる気を失ったりしてしまいがちです。
筋トレの効果はトレーニングメニューや強度で全て決まるのではなく、体質やホルモンバランス、年齢など多くの要因に影響されるため、成果にも個人差があることを認識しておきましょう。