テストステロンとは?男女それぞれ体内でどんな働きをしているか解説

最終更新日: 2023年10月31日

テストステロンは「男性ホルモン」と呼ばれるように、男性らしさを作り出すホルモンです。体内では男性の機能に重要な影響を与えるだけでなく、認知機能ややる気などさまざまな面で私たちの健康維持に貢献しています。

また女性の体内でもテストステロンは重要な役割を果たしています。この記事では、テストステロンが担う体内での働きについて紹介します。

テストステロンとは

テストステロンは、人の体で働くホルモンの一つです。ホルモンとは体内の臓器や内分泌腺で作られた後、血流で運ばれ別の場所で作用する物質のことを指します。テストステロンはほとんどが男性の生殖器である精巣で作られます。

男性らしさを作り出す重要なホルモン

テストステロンの主な働きに、男性化作用と同化作用があります。

・男性化作用

男性が成長する過程では、テストステロンの働きにより生殖器が発達し、造精機能(精子を作る機能)が備わります。成長した後は、性欲を維持するとともに男性機能に関与します。

・同化作用

筋肉量を増加させ、骨の代謝を促す作用があります。赤血球を増加させ、糖代謝や脂質代謝(糖や脂質を必要な時に消費して活動したりすること)を改善させます。

以上から、テストステロンは男性機能そのものに関与すると同時に、筋肉質で大きな体を作るなど、いわゆる「男性らしさ」を作り出す働きを持っていることが分かります。それが「男性ホルモン」と呼ばれる理由です。

ただしテストステロンは男性らしさだけに作用するものではなく、糖や脂質の代謝にも関係しています。テストステロンは生活習慣病の予防も含めた、全身の健康維持に貢献しているのです。

海馬で働くテストステロンがやる気の源

脳には記憶の中枢である「海馬」という場所があります。海馬の機能が障害されると、記憶や認知の機能が低下します。またストレスを感知する働きがあり、機能が低下すると抑うつや不安といった症状の原因となります。

海馬の機能や作用については数多くの研究が行われているのですが、近年テストステロンとの関係が指摘されています。海馬には精巣で産生されたテストステロンが流れ込んでくるだけでなく、海馬自身もテストステロンを合成し、機能維持に関係しているというのです。

ラットやマウスの実験によれば、海馬のテストステロンを低下させると空間認知機能が低下し、うつ行動が発生するそうです。そしてテストステロンを補充するとそれらの症状が改善するとのこと。テストステロンは私たちの体だけでなく、認知機能やこころの健康にも貢献していることが分かります。

テストステロンは男性だけのもの?

ほとんどが男性生殖器で産生されるテストステロン。男性ホルモンは男性にしかないホルモンなのでしょうか?

女性にもあるテストステロン

女性は男性の10分の1から20分の1程度のテストステロンを産生しています。女性にはテストステロンを作る精巣がありませんが、代わりに副腎(腎臓の近くにある2-3cmの小さな臓器)や卵巣で合成しています。

女性にはテストステロンが存在するだけでなく、テストステロンの受容体(ホルモンが作用するための仕組み)がさまざまな場所で見られることから、体内で働きを持つことが分かっています。

テストステロンは女性の味方?

男性ホルモンが多い女性、と聞くと「ゴツゴツしている」「体毛が濃い」などあまり良いイメージではないかもしれません。しかしテストステロンは男性らしさを作ることだけが働きの全てではありません。もしテストステロンが不足した場合女性の体に起こる現象として、次のような点が挙げられています。

・骨

骨密度が低い女性はテストステロンの数値が低く、骨折しやすいことが知られています。

・認知機能

テストステロンの補充が認知機能を改善する事例が報告されています。

・性機能

性欲低下とテストステロン減少の関係が示されており、膣の乾燥や性交痛の原因となります。

・心臓、血管

テストステロンが低いと心臓や血管の疾患が発生しやすくなり、死亡率の増加と関係するという研究があります。ただし逆の結果が得られた研究もあり、一致した結果になっていません。

・脂質、糖代謝

テストステロンが低いと脂質や糖の代謝が低下するという研究がある一方で、テストステロンが高いと中性脂肪やコレステロールが増加するという研究もあり、一致した結果になっていません。

以上のように、テストステロンは女性の体内でさまざまな働きを持つことが分かります。女性にとってプラスに働く面もあれば、マイナスの面を持つ可能性もあるため、味方なのかどうか、はっきりと答えるのは難しい問題であると言えます。

まとめ

テストステロンの働きについて、男性と女性に分けて紹介しました。人の体内には数多くのホルモンがあり、お互いにバランスを取りながら体調を維持し、人それぞれの特徴を形作っています。

自分のホルモンバランスやテストステロンの状態を知ることは、自身の体調を把握する一つのヒントになると言えるでしょう。